第31回【今週のよいしょ】 団地を観る映画!?1964年 山田洋次監督「下町の太陽」編

皆さま
 
おはようございます!!
川口です。

 

さて今週も始まりました、お忙しい皆様の代わりに、

今抑えておきたい映画・音楽・小説などを、

自腹でみて、勝手に紹介するコーナー『今週のよいしょ』をお送りさせていただきます。

※コミュニケーションの一環でお送りさせていただきます。

 

最近嬉しかったことは、会社の後輩に
「川口さんのメルマガみて、RRR観てきました!めっちゃ面白かったです!」

と言っていただけたことです。このメルマガやっていて良かったなあと感じた瞬間でした。

まあ、「RRR」はよいしょでは紹介していないんですが。

 

 

さて!!今週よいしょは、

1964年の山田洋次監督作品「下町の太陽」です。

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<あらすじ>

荒川の流れにそって貧しい家並が密集している東京の下町、

寺島町子(倍賞千恵子)は化粧品工場の女工として働いている。 
母は亡くなり父、祖母、弟二人の家庭は明るく平和である。 
同じ工場で働く恋人の毛利道男(早川保)は丸の内本社に勤めるサラリーマンを夢みて、
正社員登用試験の勉強に励んでいた。
 
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<下町の太陽は団地を観る映画!?>
はじめに断言しますこの映画は「団地」を観る映画です!!!
本作の冒頭はこんな最高の会話から始まります。
 
「ああ、団地に住みたいなあ。郊外の団地に。」
 
聞きました? ああ、なんて良いセリフでしょうか、、、、。
こちらは、倍賞千恵子さん演じる町子と正社員を目指す恋人の道男との何気ない会話なんですが。
今は、時代遅れで古臭いイメージがある団地が、
本作では、戦後が過去となった高度経済成長期を生きる若いカップルの
憧れのモチーフとして登場します。
団地好きの私からすると、初めて聞いた時本当に感動しました。
 
まず団地の歴史を簡単に説明すると、
日本が高度経済成長期を迎え、都市部に人口が流入してきたことをきっかけに
住宅不足が顕在化しました。それを解消するため、
1955年に日本住宅公団(現UR)の発足がしました。
当時の一般的な団地は2DKとういう間取りで、
キッチンにはステンレスの流し台、風呂と水洗トイレ付というまさに市民の憧れの対象。
 
当時の日本家屋で一般的であった食寝一体の部屋構成から、
現代では一般的な間取りであるダイニングキッチンと寝室等により構成される
食寝分離の住戸設計による住宅が建設されはじめたのもこの時期です。
ちなみに、1959年にできたひばりが丘団地は、抽選倍率数十倍という人気だったそうです。
 
そうなんです!当時は60年代当時は団地がイケてたんです!
この映画における物質的な豊かさの象徴が「団地」だったのです!
 
「ねえ、豊洲のタワマンに住みたいなあ」じゃ、
映画は撮れないですよね。ケレン味が無さすぎる(笑) 
そうなんです!団地じゃなきゃダメなんです、団地じゃなきゃ。
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↑荒川の土手を歩く倍賞千恵子さん。私自身、現在この荒川の近所に住んでいますので、
 当時から変わった景色もあったり、変わらない風景もあったり、ムネ熱でした。
 
 
<色褪せない現代的なテーマ>
この映画の本筋はラブストーリーですが、
「人間はどのように生きていくべきか」という普遍的なテーマを描いています。
 
つまり、高度経済成長期を迎え、
オリンピックも開催され、経済大国に向かっていく60年代の日本において、
物質的には豊かになっていくけれど、
自分に本当に大事なものはなにか?自分は誰とどこで生きていくのか?
 
「団地」と「下町」という対局にある二つのモチーフの中で、
人間の幸せとはなにか?を問う物語です。素晴らしかったです。
 
 
昨今、フランスのカンヌ映画祭
同じ様なテーマの映画をパルムドール(最高賞)に選んでいます。
是枝裕和の「万引き家族」、ポン・ジュノの「パラサイト」、
ケン・ローチの「私はダニエル・ブレイク」などです。
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全ての映画に共通するテーマは「格差社会」です。
物質的な豊かさを追い求めた結果、
一部の人間が富を独り占めし、
そのしわ寄せが下町の人々に及んでいるのではないか、
そこには個人ではどうすることもできない社会的システムの不条理さが
関係しているのではないかと私たちに投げかける映画たちです。
 
そうです!みなさま、お気づきの様に、
1964年に山田洋次監督が「下町の太陽」で描いたテーマと繋がっています!
映画は時代や社会を切り取る側面があり、
本作をみて、過去と現在、日本と世界は繋がっているのだなと
豊かな映画体験をすることができました。
 
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<キュン死必須!!恋に落ちるときは「るるるる」!?>
 

「あ、星が流れた」「流れ星?みえんのかい、そんなもんが」

「ほんとよ、音がしたもの」「星の?」「うん」「どんな?」「るるるる」  

 

 

物語の中盤、下町と郊外…どちらの生活が幸せなのか?

と町子は悩みます。そんな時に、一人の男性と出会った時の会話です。

 

恋に「落ちる」とはよく言ったもので、

流れ星をメタファーに、「るるるる」と町子が恋に落ちた時の音が聞こえてきます。

なんとチャーミングなんでしょう、、、!!!

 
また、カット割り多く、テンポも良いので、
60年前の映画とは思えないほどの瑞々しさがこの映画にはあります!!
フェーズ4以降のマーベル映画をみるなら、本作の方が断然面白いです!!(偏見です)
めっちゃ面白いので、ぜひご覧くださいませ!!!!
 
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↑現在も「PLAN 75」など主演で活躍されている倍賞千恵子さんですが、
 当時22歳。笑顔も素敵でしたが個人的には困り顔がチャーミングでした。
 
 
 
<おまけ:アカデミー賞答え合わせ>
今年のアカデミー賞は23部門中、16部門の的中でした。
何と言っても今年は「エブエブ」の圧勝!
アジア系俳優のお二人のスピーチには感動させられましたね。
また来年もアカデミー賞が良い映画に出会うきっかけになればと願います。
 
【主要8部門】
作品賞:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
監督賞:ダニエルズ(エブエブ)
主演男優賞:オースティン・バトラー(エルヴィス) 
      ブレンダン・フレイザー(ザ・ホエール)
主演女優賞:ミシェル・ヨー(エブエブ)
助演女優賞ケリー・コンドン(イニシェリン島の精霊)
      ジェイミー・リー・カーティス(エブエブ)
脚本賞エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
脚色賞:ウーマン・トーキング 私たちの選択
 
【ジャンル別部門】
国際映画賞:西部戦線異状なし
長編アニメ賞:ギレルモ・デルトロのピノッキオ
ドキュメンタリー賞:ナワリヌイ
 
【技術系9部門】
視覚効果賞:アバター:ウェイ・オブ・ウォーター
歌曲賞:ナートゥ・ナートゥ(RRR)
作曲賞:サン・ラックス(エブエブ) 
衣装デザイン賞:ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバ
編集賞:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
美術賞バビロン 
メイク&ヘア賞:エルヴィス 
        ザ・ホエール
音響賞:トップガン マーヴェリック
 
【短編部門】
短編アニメ賞:ぼく モグラ キツネ 馬
短編ドキュメンタリー賞:Stranger at the Gate(原題) 
            エレファント・ウィスパラー:聖なる象との絆
短編実写映画賞:無垢の瞳 
        An Irish Goodbye
 
 
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そんな感じでした。
また来週も宜しくお願い致します。